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Solar Eclipse
今は昔の大航海時代…… 西欧諸国は挙って世界中に船を出航させ、国際交流を進めてきた。冒険(開拓)・文明・文化交流を世界各国で行ってきたのである。この当時は船が渋滞を起こす程に海の上を行き交っていた。そんな船の一艘がカリブ海南西に位置する上に突き出た半島に上陸した。
「じゃ、行ってくるよ」
一人の青年が船から降りた。青年の名は「テオ・カスティーヨ」スペイン人の若き冒険家である。
彼がスペイン本国から命じられたのはカリブ海南西に位置する半島の調査であった。
テオは凄腕の冒険家、これまでの冒険で未開の地の開拓をいくつも成し遂げており、スペイン国王より数多くの勲章を賜わっていた。
船員が船から降り、目の前に広がる鬱蒼としたジャングルに入ろうとするところで声をかけた。
「テオさん! お一人でいいのですか? 誰かお供などは?」
テオはニッコリと微笑み、白い歯を見せた。
「ああ、一人でいい」
基本、こう言った冒険は複数人で行うものである。しかし、テオの冒険は行く場所行く場所が厳しいもの。同行者は例外なく皆冥府への路を逝くことになってしまった。
例を挙げるだけでも…… 断崖絶壁の山からの落下、霧深い谷への落下、原住民の襲撃、底なし沼への沈下、海への水没、得体の知れない虫に刺されての熱病の発症…… テオの冒険についてくることが出来ずに力尽きる冒険者ばかりなのである。テオはそんな者達を数え切れない程に見送ってきた。
現状、スペインにはテオの冒険について来られる程の冒険家がいない。
だから、テオは専ら単独での冒険をするようになったのである。今回は「行き帰り」の帆船の船員の送り迎えのみを頼り、現地の冒険は単独で行うのであった。
「一ヶ月(三十日)、ここで投錨してます。これを過ぎたら私共は本国に戻り、テオさんは陛下に死亡と報告させて頂きます」
「ああ、三十日を過ぎたら俺は死んだと思ってくれていい」
「はい、日数の方は月で把握しますので。寝る前には夜空を眺めて月の形で日数を確認して下さい」
「今日の夜が新月だったから、次の新月までに帰ってくればいいんだな?」
テオは天に向って十字を切った。天の神に冒険の無事を願ったのである。
「はい、では…… 我らが神のお導きがあらんことを。アーメン」
テオは未開のジャングルの奥深くへと入っていくのであった……
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