Solar Eclipse

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 翌日、イツァエ達は隣の部族の少年達とピッツで競い合っていた。テオも応援に行ったのだが、激しい違和感を覚えていた。球戯場の観客席が両部族の観客全て埋まっているのだ、歓声も凄く熱い。一体、子供同士の「スポーツ」で何をこんなに盛り上がっているのだろうか? テオは疑問に思うのであった。 ピッツの試合であるが、両チームともボールを輪に入れることはなかなか出来なかった。両者激しい攻防が繰り広げられ、ボールを輪に通すことを許さないのである。 決着を付けたのはイツァエだった。イツァエの褐色の背中にぶつかったボールは弧を描き、輪の中を見事に通り抜けた。その瞬間、観客達が万雷の拍手と祝福の歓声を送る。イツァエは照れ臭そうにそれを受けるのであった。 イツァエは両部族から「おめでとう!」と祝福の言葉を受け、これまで着ていたピッツのユニフォームである腰布一枚の上に極彩色の貫頭衣を纏わされ、黄金や翡翠の装飾品で体を彩られて行く、最後はこのユカタン半島を飛び交う鳥であるケツァールの極彩色の羽飾りを頭につけられ、族長(オサ)よりも豪華絢爛な格好にされたのだった。 子供同士の試合でここまで盛り上がるなんて…… このピッツと言うスポーツはこのユカタン半島では国が動く程の国技なのだろうとテオは感心するばかりであった。  (ねぐら)へと帰ったテオはイツァエを労おうと出来る限りのパーティーの準備を行っていた。しかし、イツァエはいつまで経っても(ねぐら)へは帰ってこない。 他の少年達に事情を聞いたところ、衝撃の事実を知ってしまう。 「イツァエ、遅いなあ。どうしたんだろうか」 「イツァエはもうテオの世話をしないよ」 「どういうことだい?」 「イツァエは生贄に選ばれたんだ。テオのお世話は僕たちで続けるから心配しないで」 「え? 生贄って?」 「ピッツって言うのは『太陽神』が生贄を探すために行う儀式なんだ。壁についた輪っかは太陽を模したもので、そこにボールを入れた少年に神様が祝福を与えるんだ」 「そんな…… 今日試合を観ていた皆が喜んでいたのは?」 「生贄が決まった喜びなんだ。だから皆イツァエに『おめでとう』って言ってたでしょ?」 生贄に選ばれておめでたいはずがない! テオはイツァエの家へと向かった。
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