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街は真綿の布団にくるまって眠っているように静かだ。雪は足首程の深さに積もり、一歩ごとギュッギュと鳴る。 変な模様の傘がダサすぎて恥ずかしかったから、僕が使用者だと知られないように傘で顔を隠した。 商店街の歩いていると「シんだ君?」と女の子に声をかけられた。 僕は新田(ニッタ)ヒデアキだ。 小学生の時は「シんだ君」なんて少々悪意を感じるアダ名で呼ばれていた。それにしても久しぶりに聞いた。こんな場所で小学校の同級生に会うなんて珍しい。 「シんだじゃなくて新田(ニッタ)だよ!」とお決まりのツッコミを言いながら背中を丸めて声の方を向いた。 「あ!」降り積もる雪が見せるまぼろしかと思った。 古くて汚い喫茶店の古ぼけたオレンジ色のアーケードの下に、初恋の彼女が雪宿りしていた。 「やっぱり、シんだ君だ!」彼女は嬉しそうに微笑んだ。 僕は脳内の情報処理が間に合わなくて、肉体もろもろの全機能が停止したけど、目だけは彼女をしっかりと捉えていた。まさか彼女に会えるなんて思っていなかった。
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