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「シんだ君、それあたしの傘?」 傘を畳みながらゆっくり近づく。彼女に傘を手渡した。 「カエソウトオモッテ」何か喋らないと、と焦ったせいでロボットみたいな口調になった。 「アハ、でもシんだ君、今、その傘を使ってるよね? 良いよ良いよ、使って。濡れちゃうよ」 彼女はバックを持っていない方の手の平で、傘を押し返してきた。 「ぼ、僕は濡れても大丈夫だよ」徐々に脳が動き出す。 「ダメだよ。風邪引くよ。えっと、シんだ君は駅まで行く? あたしも駅前からバスに乗るから一緒に行かない?」 「え? うん、いいの?」 「うん。はい、傘をさして」 僕は傘を広げると彼女は僕の横にぴょんと弾んで入ってきた。トンッと彼女の肩が僕の胸にぶつかる。 彼女との近い距離にドキドキしながら、僕よりも狭い歩幅に合わせて歩く。彼女のふんわりとカーブした前髪に、さっきまで雪だった小さな水の粒がのっている。
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