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新しい街での生活にすっかり慣れた中学三年の夏前に持病が悪化してしまい祖母が入院した。
そして年の瀬が押し迫った12月終わり、眠るように祖母は旅立った。
それからは祖父と2人、慎ましく暮らしてきた。
母は毎月私の教育資金にと幾らかを送ってきてくれていたが、祖父母はそれに一切手を付けず大学に行くために貯めておいてくれた。
家から自転車で通える高校に進学し、バイトを始めた。
年金と祖父母の貯蓄を削って生活しているのだからせめて自分の携帯料金や遊びでかかるお金は自分で払う。
そう決意してバイトに励んでいる。
最初はスーパーでバイトしていたが、店内が寒く体が冷え過ぎてしまい体調を崩してばかりだったので今のコンビニにした。
他よりは時給が良いだけに卒業まで続けたいが、掃除をしない上に嫌味を言うようになった佐藤さんがいるから気は重い。
他に良いところ有れば面接して貰おう。
そう決めてはみたけれど目ぼしいバイト先は見つからなかった。
「店長今日もいないってー」
佐藤さんはレジの前でスマホを弄りながら私に言ってきた。
なんだか嬉しそう。
最近バイトに行っても店長は来ていない。2店舗目がオープンしたばかりだから忙しいらしい。
店長の息子さんが来てはいるけれど、レジにはほとんど入らず発注や補充ばかりしている。
この日は佐藤さんと店長の息子さんとパートのおじさんと私の4人だった。
「フライヤー怖くて出来ないんですー」
この日も掃除をしない佐藤さんは、いつもは文句を言いながらもやっている作業をパートのおじさんにお願いしている。
「立ちくらみ酷いので奥で少し休んでも良いですかー」
息子さんにそう言って事務所に入れば暫く出てこない。
そんな事が続いていたある日、
「最近万引きされているみたいだけど心当たりある?」
いつもは居ない店長が突然やってきて、私達にそう尋ねてきた。
スナック菓子やアルコール類が減っているというのだ。
「学生の集団や不審な動きをする人には気をつけるように」
そうは言われても、レジに入っていればそんなに目は届かない。
私と息子さんがレジでおじさんがフライヤーをしていた時だった。
佐藤さんが珍しくトイレ掃除をしていた。
「いらっしゃいませ」
10人程の若い男女のグループが賑やかに入ってきた。
トイレ掃除を終えたらしい佐藤さんは補充に入るといいバックヤードと店内を行ったり来たりしている。
万引きの話があったばかりだからか、息子さんに店内に居るようにと注意されてはいたけれど、
「でも在庫ほとんどないんで。見ながら補充してますねー」
いつものように軽く返事するとまた行ったり来たりし始める。
そのうち仕事帰りの人達も入ってきて混み合ってきてしまい、必死でレジをこなすしかなかった。
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