神様との恋は罪ですか?

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思わずうっとりと見入ってしまう ような、美しい夜景。しかしこれらが 人々の労働で出来ていると思うと 何だか不思議な気持ちになる。 都会の明るさを全て集結させた ようなきらきらと輝いている人々は 景色を綺麗、なんて、呑気に言う。 この夜景のように社会も誰もが 表裏一体の関係で出来ているんだ。 …なんて、くさいこと考えちゃって。 そんな俺はあんなきらきらした人達 とは正反対に居るような奴な訳で。 近所のコンビニからの帰りの俺は、 頭に浮かんだ言葉に大きなため息を つく。買ったアイスコーヒーを飲み、 何となくコンビニで流れていた 今流行りの音楽を口ずさむ。 最近人気の出ているあのシンガー ソングライターはまだ19歳らしい。 …まだ若いのに、すごいよなあ。 そんなすごい彼に比べて、23歳、 俺は無名の三流ミュージシャン。 俺は はは、と乾いた笑みを浮かべる。 薄暗い路地と静かに歩いていると、 ふと背後からにゃあん、と声がした。 後ろを振り替えると、藍色の丸い瞳を 輝せている黒猫が立っていた。 黒猫にゆっくりと近づいてみるが、 予想外にその黒猫は逃げなかった。 しゃがんで黒猫に手を近づけると、 黒猫はすりすりと顔を擦り付ける。 その様子に、思わず頬が緩んだ。 「ふふ、可愛いな、あんた」 ぽつりとそう呟きながら黒猫と じゃれていると、辺り一体にしゃらん、 と可愛らしい鈴の音が鳴り響いた。 すると、ごろんと寝転んでいた黒猫は 突然立ち上がって走り出した。 暗闇の中へ消えていく猫を僕は ひらひら手を振りながら見ていた。 …もうこんな人生、疲れちゃったな。
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