神様との恋は罪ですか?

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いつものようにクロにご飯をあげに 路地裏に来れば突然何もない空間から 謎の男が現れ、クロが喋りだした。 信じられない出来事の数々にに完全に キャパオーバーになった俺はその場で ぶっ倒れ、目が覚めると謎の和室に、 夢では無かったことに絶望していると 突然ご飯を食うかと言われて今に至る。 …っていや展開早すぎん? これがなんと全部数時間前の出来事。 わぁお俺もう信じらんなーい。 真顔でそんなことを考えていると、 突然男は立ち上がった。そして男は ここで待っていてくれ、と言い残し、 ふわりと煙を纏ったと思うと忽然と 姿を消した。…うん、消えた。もう あんまり驚かなくなってきたよ俺。 …てかあのどこ行ったんだろ、 飯って言ってたから台所? むむむ、とそんなことを考えていると、 横にぽてーん、と座っていたクロが ゆらりとふわふわのしっぽを揺らした。 …あ、そうだ、クロがいるじゃん。 「…な、なあここ、どこだ? あの人誰? どこ行ったの?」 「んう? ここは神様の社だにゃ、 あ、さっきここに居た方が神様、多分 台所の行ったんじゃないかにゃあ」 …うお、やっぱり喋った。 自分から話しかけておいてなんだが やっぱり驚いた。…なんかもう猫が喋り だしたり、突然人が消えたり出てきたり したらもう神様だって信じられる。 …やば、なんか感覚麻痺ってきた。 自分の意外な適応力の高さに驚いて いるとクロがしゅんと項垂れて言った。 「…突然びっくりさせてごめんにゃ」 「え、ああ別にいいけど…。 …何でこんなことになったんだ?」 あまりの可愛さに撫でたくなった俺は 思わず伸ばした腕を慌てて引っ込めた。 ぐうぅ、と悶えそうになるのを我慢し、 平静を保ってそう問いかけた。 …ぐぬぬ、猫好きには拷問だ。 クロは言う。 「わがはい、この1ヶ月くらい ちょっと現世に家出してたんだゃあ」 「家出…それは何で?」 ぽそぽそ、と悲しそうに呟いたクロに 俺はそう問いかけた。家出かあ。何か 辛いことがあったんだろうか。俺なんか でいいなら話聞くんだけど。 …ていうかそれ、家出って表現で 合ってんのか?ここ社って言ってたから 社出?いやなんか語呂悪りぃな。 ぽわぽわとした馬鹿みたいな頭で そう考えていると悔しそうに顔を 歪めたクロが叫ぶように言った。 「だって、だって…!! 神様の料理クソまずいんだにゃ!」 「…はい?」 …こいつ、今なんて? 不味いから家出?…いや社出か。 いやどちらにせよしょうもなくね? 「神様の料理なんかずっと食ってたら 味覚ぶっ壊れてそのうち死ぬにゃ!あんなのもうダークマターなんだにゃ!」 例の料理(クロいわくダークマター) を思い出したのかクロはぶるりと身体を 震わせた。いやそんな深刻そうな顔で 言われたって別にしょうもないもんは しょうもないけど。 「…何でそれで俺を連れてきたの」 「神様がわがはいを助けてくれた 礼がしたいって言ってたにゃ」 「俺、何かしたっけ」 「いつもご飯くれてたにゃ! あんなに美味しいご飯初めてだったにゃ」 うっとりと頬に手、いや肉球を当てて いるクロがぱあっ、と100点満点の笑顔を 浮かべた。…そんな喜ばれても、 普通にコンビニで買ったもんだけど。 っていうかこれお礼だったのか…。 俺は驚きながら部屋を見回した。 すると、ふいに背後から声をかけられる。 「戻ったぞ」 「おわあぁっ!??」 「みぎゃあっ!??」 俺たちは二人してすっとんきょうな 声を上げて飛び上がった。それと同時に どこかから漂ってきた強烈な異臭に 気付いた。思わずむぎゅ、と鼻を摘ま んだ俺は恐る恐る匂いの元を見た。 「こ、これは一体…」 「…神様の料理だにゃ」 何だこれ、え、料理?ほんとに? 机に置かれた土鍋に似た器の中に 入っているのはぐつぐつ、と煮えた ぎっている赤紫とも赤黒いとも言える ような何とも禍々しい物体だった。 嫌な汗をかきながらクロの方を見ると、 クロは青ざめながら真剣な表情で頷く。 ああ、これは家出しても納得かも…。 そんな俺たちをよそに神様は真顔で ご飯(ダークマター)をよそい、 クロと俺の目の前に置いた。 …いや、厚意だから断れねえー。 俺がダークマターに手をつけられずに いると、クロは皿に顔を近づけた。 「ちょっクロ!?」 「恩人に毒見させる訳には…いかにゃ、…ッンニ゛ャアァッッッ!!???」 「くっ…クロオオォ――――!!??」 ちょび、と舌でダークマターを舐めた クロはばったーんと盛大にぶっ倒れた。 …俺、何してるんだっけ。
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