神様との恋は罪ですか?

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それから数週間、バイト帰りや 買い物での行き帰りであの黒猫を見かけるようになった。いつも帰りの合図は あの鈴の音だ。一体あれは誰が 鳴らしているのか、飼い主なのか、 それはもちろん気にはなるけれど、 特に咎められることもしてないし、 まあいっか、と考えることにした。 とりあえず俺は黒猫はクロ、と呼ぶことにし、よく会うようになった。 本屋のバイトからの帰り道、 バイト代が入ったのは嬉しいけど、 本を運ぶ雑用ばっかりで腕がもう 使い物にならない。へろへろになった 腕でコンビニ袋をぶら下げる。 先ほど買ったツナ缶と牛乳が袋と ぶつかり合って音をたてている。 密かな楽しみとなっていたクロとの 時間に浮かれながら歩いていく。 しかし、路地裏にたどり着いても、 そこに猫は居なかった。てっきり いつものように何処かからやって来て 足にすり寄ってくると思ったのに。 「おーい、クロー来たぞー、」 控えめにそう呼んでみても、 クロの姿はどこにも見当たらない。 …どこに行ってしまったのだろう。 きょろきょろと辺りを見回して いると、今までよりもより一層大きな 鈴の音が辺り一体に鳴り響いた。 驚いて思わず目を瞑ると、突然、 背後から低い男性の声がした。 「お前か、俺の使いと会っていたのは」 振り向くと、袴や着物といった類いの 格好をした背の高い男が立っていた。 その恐ろしいほどの真顔に何だか 背中がぞくり、と震えた。
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