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【 夢の1000万円 】
俺は、本当のことを話した。
俺が応募した作品が最優秀賞を取ったこと。その賞金が1000万円であることを。
「ええ~っ! そうなの♪ すごいじゃない、あなた♪ 1000万円って、すごいわね♪ あなた、おめでとう♪」
妻は何年ぶりだろう。向こうから俺に抱き付いて来たのは。それでも、俺は嬉しかった。そんな妻の喜んでくれる顔を見るのが、一番の幸せだ。
「ねぇ、その最優秀賞を取った絵を見せてよ♪」
「えっ? 絵を……?」
「そう、その絵を私にも見せてよ♪」
妻のその弾むような言葉に、俺はもう隠し通すことが出来なくなった。
仕方なく、賞を取ったスマホの画像を妻に見せる。
すると……。
「えっ? 何これ? これって、もしかして、私……?」
「あ、ああ……。多分、そう……」
「いつの間に、こんな絵を描いたの? 全然気付かなかった。しかも、今日着ている服と同じなんだけど……」
「ああ~、そ、その~、何だ。今日と同じ服だったんだな。奇遇だなぁ~……」
俺は、今日撮った写真を加工したなんて、とても妻には言えなかった。
こっそり、描いていたことにできるものなら、そうしたい。
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