監獄レストラン

第一章

　地のすべての獣、空のすべての鳥、地に這うすべてのもの、海のすべての魚は恐れおののいて、あなたがたの支配に服し、、すべて生きて動くものはあなたがたの食物となるであろう
　【旧約聖書　創世記】

「──小鳥遊さん。これ以上返済が滞ると、うちとしても困るんですよね」
「ニコニコローン」代表取締役社長、蛇腹金造の言葉に、小鳥遊ことりは覇気のない声ではあ、と答えた。蛇腹の隣には、特徴のない顔の男が座っていた。確か、飯島という男だ。ことりは目の前の男たちから視線をそらし、テーブルに置かれた水を一口飲んだ。わざわざ流行っていない喫茶店を選んだのだろうか。午後三時だというのに、店内にはことりたち三人しか客がいない。マスターは関わるまいと思っているのか、こちらに背を向けて食器を磨いていた。蛇腹は黒の革手袋をつけた手で、テーブルをリズミカルに叩いている。
「返済できる当てがないなら、ご実家に電話しましょうかね」
蛇腹の言葉に、ことりはびくっと身体を震わせた。
「それは、困ります」
「こっちもお金を返してもらえないと困るんですよね。ご実家は愛知でしたっけ？」