第三章

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 カップルは不思議そうな顔でことりを見た。いきなり声をかけて不審がられたかと、慌てて取り繕う。 「あ、えーと、雑誌を見て来たんですけど、味を変えたなんてインタビューにはなかったので」 「うん。大きな声では言えないけど、二ヶ月前まではひどかった」 「潰れないの不思議だったもんな」  食事を終えたカップルは、席を立ってレジへ向かった。いきなり味がよくなった?一体どういうことかと思っていると、熊川が戻ってきた。彼は困り顔でため息をついた。 「厨房は見ることができませんでした。あのウェイターがピッタリ張り付いて来まして」 「当たり前ですよ。無理やり入店して写真撮りまくって、完全に不審者ですよ」  ことりは先程のカップルの話を熊川に伝えた。熊川はなるほど、と相槌を打つ。 「そのあたりを探ってみる必要がありそうですね」 「探るって、どうやって」  熊川はウエイターに視線を向けた。レジで清算を済ませた熊川は、ウエイターに笑顔を見せる。 「とても美味しかったです。またきてもいいですか?」 「またのご来店、お待ちしております」
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