第三章

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 ウエイターの内心はともかく、丁寧に送り出された熊川とことりは、銀座線でコンシェルジュリーに戻ってきた。制服に着替え終えて、かかとにできた靴擦れを撫でていると、みどりが絆創膏を差し出した。ことりは礼を言ってそれを受け取る。 「すみません。普段、スニーカーしか履いてないので」 「若いんだから、少しはおしゃれしたら」  ことりは肩をすくめて絆創膏を貼った。熊川から報告を聴いたオーナーは眉を顰める。 「おいおい、それじゃあなんも探れなかったってことかよ」 「そんなことはありませんよ。ね、ことりさん」  二ヶ月前と味が変わったという話をすると、オーナが唸り声を上げた。 「そりゃあ、血が滲むような不断の努力をしたんだろうよ。今回は保留なんじゃねえか」
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