第三章

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「我々、とある方に頼まれて冴島さんの調査をしているんです。二、三質問に答えていただけますか? 「調査……?」 「冴島さんが、10年前に事件を起こしたことはご存知ですか」  熊川がそう尋ねると、西本の顔が強張った。おしぼりをいじる手の動きがますますせわしなくなる。 「はい……彼とは、その頃から知り合いだったので」 「失礼ですが、西本さんはいま、おいくつですか?」 「三十です」 「なるほど。では事件当時は成人してらした」  西本はごくりとつばを飲み込み、おしぼりで額を拭った。今日は肌寒く、汗をかくような天候ではない。熊川は西本をなだめるように、穏やかな声で言った。 「西本さん。正直に言っていただけるのなら、口外はしません」 「……もう、わかってらっしゃるんですね」
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