第一章

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 スマホを手にした蛇腹を、ことりは必死で止めた。蛇腹はスマホをしまって、「ソープに行くか、それが嫌なら 内蔵売ってもらうしかないですよね」と言った。その言葉が冗談なのか、本気なのかはわからなかったが、一般人のことりを怯えさせるには十分だった。  蛇腹は返済日を念押しし、部下の飯島を引き連れて去って行った。ことりは残された伝票を手に、のろのろとレジへ向かう。コーヒー代は三人分で千二百円だった。電車賃を抜けば、所持金は残り数十円だ。  二十三歳、大学中退、貯金なし。彼氏なし。借金総額六百万。それが、現在の小鳥遊ことりの状況だ。 「ねえ、小鳥遊さんって、ホストとか興味ある?」  同級生のその一言が、ことりを破滅に追い込んだ。
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