12 喰らう

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「ああ、ラロさんが繋いでくれていた掃除屋さんたちと今も繋がっているんで、プロに頼む予定です。というか、昨日のうちに頼んであるので、そろそろ着く頃ですよ」 「さすがだね。さて、では日程と場所が決まったら連絡をしてくれ。楽しみにしているよ」 「はい、僕もです」  ラロが教会の重厚なドアを開けて出ていくと、僕の後ろで紫苑さんが大きく息を吐いた。 「大丈夫、紫苑さん」 「えっええ、大丈夫です。何か息をするのも憚られる空気だったので」  真っ青な顔色で紫苑さんが無理に笑顔を作る。その後、すぐに掃除屋さんたちがやってきて、坂井君の死体を回収し、床やテーブルの汚れも何もなかったかのように綺麗にして、あっという間に去っていった。  僕たちは事務所に戻り、いつものソファーに座り、紫苑さんの淹れてくれたコーヒーを飲んでいる。 「紫苑さん、一つ訊きたいことがあるのだけれど」 「なんでしょう?」 「さっき、坂井君が来た時はすぐにコーヒーを出したのに、ラロの時にコーヒーを出さなかったのはなにか理由があったの?」  そう、いつもの紫苑さんなら来客が誰であれその人のオーラを読み取り、最適なコーヒーを淹れてくれるはずだ。しかし、あの時は僕に言われるまで全く動いていなかった。それが僕にとってはすごい違和感であり、ラロの能力に関する重要なポイントになると思っている。
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