107人が本棚に入れています
本棚に追加
/193ページ
左目からも出血してきたのか、視界がぼやけ始めた。
「僕があなたにかける呪いを、あなたが喰らいきれるか。最後まで喰らうことができればあなたの勝ち、途中で限界がくれば僕の勝ちでどうです?」
「分かりやすくていいね。その勝負、受けてたとう。合わせ鏡の呪いを効果なしと判断し、行わなかった時点で君の仮説は大筋正解だからね」
僕とラロは、部屋の中心に置かれた蝋燭を挟むように対峙した。僕の後方に紫苑さん、両側の鏡にはイミルと呼ばれた悪魔とファゴと呼ばれた悪魔が、鏡越しに僕たちを見ている。
風のない室内にも関わらず、大きく揺らめく蝋燭の炎が、明暗の境目をぼやかしていく。
僕はラロの目を見ながら、ゆっくりと口を開く。
「あなたは、呪われました」
シンプルな一言。だからこそ良い。抽象的な表現や比喩的な言い回しでは味わえない、この感覚。相手に対して、真っ直ぐにまさに適当な言葉だけのチョイス。これこそ芸術だ。
ラロは笑顔を浮かべながら、蝋燭を跨いで僕の目の前にやってきた。
「素晴らしいね。呪う……この言葉自体がすでに言霊なんだろうね。うん、素晴らしい告知だった」
そう言って、僕の肩に手を置いた。
「だが、君の呪いは私には届かない」
余裕の表情でラロが僕の目を覗き込む。
「一つだけならね」
最初のコメントを投稿しよう!