12 喰らう

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 左目からも出血してきたのか、視界がぼやけ始めた。 「僕があなたにかける呪いを、あなたが喰らいきれるか。最後まで喰らうことができればあなたの勝ち、途中で限界がくれば僕の勝ちでどうです?」 「分かりやすくていいね。その勝負、受けてたとう。合わせ鏡の呪いを効果なしと判断し、行わなかった時点で君の仮説は大筋正解だからね」  僕とラロは、部屋の中心に置かれた蝋燭を挟むように対峙した。僕の後方に紫苑さん、両側の鏡にはイミルと呼ばれた悪魔とファゴと呼ばれた悪魔が、鏡越しに僕たちを見ている。  風のない室内にも関わらず、大きく揺らめく蝋燭の炎が、明暗の境目をぼやかしていく。  僕はラロの目を見ながら、ゆっくりと口を開く。 「あなたは、呪われました」  シンプルな一言。だからこそ良い。抽象的な表現や比喩的な言い回しでは味わえない、この感覚。相手に対して、真っ直ぐにまさに適当な言葉だけのチョイス。これこそ芸術だ。  ラロは笑顔を浮かべながら、蝋燭を跨いで僕の目の前にやってきた。 「素晴らしいね。呪う……この言葉自体がすでに言霊なんだろうね。うん、素晴らしい告知だった」  そう言って、僕の肩に手を置いた。 「だが、君の呪いは私には届かない」  余裕の表情でラロが僕の目を覗き込む。 「一つだけならね」
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