12 喰らう

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「なに?」  僕の肩に手を置いたままのラロが、僕の言葉に一瞬反応する。  その直後、ラロの表情が僅かに苦悶した。それに合わせるように、僕の目や鼻、口から垂れる血の量が増えてくる。 「なるほど。一つの強力な呪いではないんだね。如月君、君はいくつの呪いを、その魂に刻んできたのかね」  ラロが鼻血を垂らしながら、僕に訊いてきた。 「あなたの魂がオーバーフローして破裂するくらい……ですかね」 「まったく、君も人間を捨てた存在になってきたね」 「褒め言葉として捉えておきますよ」  人間を捨てた存在か。とんでもない、僕はまだ人間をやめる気はないですよ。もちろん、人間より低俗な悪魔なんかになる気もないし、あなたのように神のふりした呪いそのものになる気もないですよ。  僕は人間として、悪魔も呪いも全て掌握したいんですよ。全てを統べる存在としてね。僕が、人間を尊い存在に昇華させます。そして、僕は人間から神になる。  僕の肩に置かれたラロの手が震え始めた。ラロも限界に近づいてきているのだろう。 ガフッ  二人同時にあたりに血を吐き散らす。室内であるはずなのに、風が吹き抜け舞い上がった二人の血を運び去った。
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