オリオンに啼く

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私は男の血の付いた上着を脱いで、待合の長椅子に投げ捨てる様に置いた。 「とりあえず、止血だ」 父と二人で、手術台に男の身体を乗せた。 思ったよりも出血は無く、太い血管は傷付いていない様だった。 「お父さん」 私は、止血をしようとする父の腕を掴んだ。 父は振り返った。 「後は私がやるわ…。お父さんは関係ない事にして」 父は私の顔を見て微笑む。 「そんな事出来る訳無いだろう」 「私が勝手にやった事にして…」 「出来る訳無いだろう」 「お願い…」 「出来る訳無い」 父は声を荒げる。
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