オリオンに啼く

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診察室の前に来ると、父が薬の束を私に渡した。 「これでしばらくは持つだろう」 私は頷いて、 「ありがとう」 と父に礼を言う。 折尾も父に頭を下げていた。 折尾を車の助手席に座らせて、私も運転席に乗り込んだ。 父は車の傍に立ち、昔の様にニコニコと笑いながら私に手を振っていた。 「オリオン座が見えるな…」 折尾は空を見て言った。 「オリオン座しか知らないんだけどな」 私はクスクスと笑った。 「私もよ」 そう言うとエンジンを掛けた。 そして一気に走り出した。
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