オリオンに啼く

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ルームミラーを見て、後部座席に座っている男と私のこめかみに当たっているモノが拳銃だという事が確認出来た。 残念ながら、突き付けられている拳銃が本物なのかどうかまではわからなかった。 しかし、後部座席の男がさっきの二人と同類の人種だというのは身形で判断出来た。 そして、男の額には汗が浮いていた。 「何なの…」 私は何を訊けば良いのかわからず、とりあえずそんな言葉を発する。 「黙って運転しろ…」 男はそう言うと私のこめかみから銃を離したが、銃口はまだしっかりと私の方を向いていた。 私は無言で頷き、電子タバコをドリンクホルダーに戻した。 カーナビからは静かにオリオン・サンの歌声が流れている。 「オリオン・サンか…」 私は男の口からオリオン・サンの名前が出た事に驚いた。 「良い趣味してるじゃないか」 私は嬉しくなった。
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