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第十章
次の日の朝である。龍太は平岡のじいちゃんが気にはなりはしていたものの、病院にいるからまず大丈夫だろうと思い、朝カーテンを開けた。
一面、銀世界!!
しかし、自分たちの20号棟の前だけは、人の通れるところはよく雪がかけてあり、通行人の人は何とか通れるスペースが確保されていた。
龍太は安堵した。
あとは、路面凍結で転ぶ人が出なければいいが・・・
今朝も出勤である。幸い南岸低気圧はすっかりさり、空一面大快晴の突き抜けるような青空。これなら、雪も早く溶けてくれるかも知れない。お天道様の力に大感謝である。
小銭入れから部屋の鍵を取り出し、玄関をでて階段を降りて行った。どうも、自転車置き場の坂道も、昨日かいといたから大丈夫そうである。
一階の出口を出ていくと、駐車場のところに昨日の若い奥さんが車のワイパーを上げっぱなしにして、折れないようにしていたのを直しているのが見えた。
龍太はすかさず声をかけた。
「おはようございます。昨日は、有り難うございました。お陰で助かりました」
と、謝意を表すと、若い奥さんが、
「いえいえ、私のほうも体動かすの大好きですから。楽しかったですよ」
と、にっこり微笑んだ。
龍太は、申し訳なさそうに奥さんに言った。
「奥さんのお陰で、雪かきだけでなく自分も救われました。寒くないですか?と言ったときは、失礼なことを申しあげたかも知れませんが・・・」
若い奥さんは言った。
「寒くないですか?なんて、お言葉、上手ですね。雪かきも力はいっていたし」
すかさず奥さん、
「今度は、もっとみんなで声をかけあってやりましょうよ!」
「この、雪かき上手!」
Fin.
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