ひつじがいっぴき ひつじがにひき………

　なつめは、家路につき、自分の部屋に入った。もちろん、なつめの部屋は羊グッズだらけだ。羊のマスコット、羊のシール、羊のイラストが描かれたポーチ。

「ふふふ、みんな、親切だなあ……」

　なつめの部屋にあるものは、すべて、周りのみんなが、「ひつじ、好きよね？」と言ってくれたものばかりだ。

　なつめがしたことは、ひたすら、自分の持ち物に羊を描いた。それだけだ。ペン一つあればできる。

　それだけなのに、羊のグッズが一つ、また一つと集まり、今では山のように部屋を覆い尽くしているのだ。

「好きなものを好きって主張するのって、大事よね……」

　羊グッズに囲まれながら、なつめは満足気に微笑んだ。