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「眩暈がひどくて」
「よく言ってくれたわ。無理は禁物! 少し休みましょう」
このまま雄介に無理な運転はさせられない。本当に酷い状態だ。
「何か飲み物を買ってくるわ。丁度公園があるから、外の空気を吸って、休みながら帰りましょう。歩ける?」
車を停めたすぐ傍に公園があった。住宅街の中にある公園で、普段は子供や近隣住民の憩いの場になっているのだろうが、今は誰もいなかった。
念のため、周囲を見回してみた。私達が誰かに尾行されたり、様子を伺っているような人物が居ないか確認してみたが、誰もいない。
油断は出来ないが、大丈夫だろうと判断して雄介に肩を貸し、公園のベンチへ座らせた。
「飲み物買ってくるね。待ってて」
「・・・・ごめんな。迷惑かけて」
「何言っているの。辛いのは当り前よ。だから迷惑なんて思わずに、吐き出せばいいわ」
努めて笑顔を見せ、その場を離れた。とりあえず今の状況の雄介を一人には出来ない。
園内に設置されている自動販売機まで走り、小銭を突っ込んだ。暗い公園内で存在を示すように煌々と灯りを光らせているそれは、異質な存在にも思える。
何を買おうかと思って見ると、売られているドリンクはあまりなじみの無いメーカーのものだった。園内等はよくこういうメーカー不明の自動販売機が置いてあるものだ。まあ、味にさして変わりは無いだろう。炭酸飲料やジュース系は、味の当たり外れはあるが。
誰もいないか再び左右を確認しながら、無難にミネラルウォーターとスポーツドリンク、糖分を含んだレモンティーを購入した。三本ほどの飲み物を抱え、雄介の下に戻った。
彼は、空高くに浮かんでいる月を眺めながら、泣いていた。
ただ、静かに。
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