Diary1:始動

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 ランチも兼ねて、駅近ビルの一階にある珈琲ショップ『ホーリーカフェ』で待ち合わせをした。昼間のランチ時は、時間に余裕のある主婦や休み中の学生に交じり、複数のご老人が珈琲一杯とサンドウィッチ一皿の安い値段で何時間も粘っている光景が目に付く。  かく言う私も三十歳という年齢からして、時間に余裕のある主婦に分類にされるのだろう。子供がいないからある意味余裕はあるけれど、精神的な余裕はない。こういう時、自由に見える独り身の人が無性に羨ましく思える。  それぞれ事情はあるだろうけれど、それを見せないから華やかに眩しく見える。不義理なパートナーのせいで、余計な苦労や苦痛を伴う事も無いだろう。そのまま独身の方がいいですよ、とお節介なアドバイスをしたくなる程に。  要するにないものねだり。隣の芝生は青く見えるのだろう。  待ち合わせの午前十一時半。やや遅れ気味の到着だったが、相手もまだ来ていない。美奈が時間にルーズな所は昔から相変わらずだ。  美味しそうな焼き立てのサンドウィッチと、カプチーノをオーダーした。
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