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「奥野さん」
「はい」ピリッと背筋を伸ばして顎を引き、構えた返事をした。
「もう無いと思いますが、今後、不用意に僕と行動した事やその他の事項を、許可なく他人に伝えてはいけません。いいですね?」
「はい、すみませんでした。気を付けます」
「注意しておかなかったこちらにも責任がありますし、僕が職業柄配慮しすぎだという事は解っています。一般の方が思いつかない所まで、厳しく注意してしまってすみません」
「いいえ。厳しいのは私達の為だと解っています。佐伯さんの言う通りです。今後、二人で気を付けます」
「こちらの意図を、解って頂けて嬉しいです」
佐伯さんの顔が、ようやく普段の優しいものへ変化した。
彼がここまで厳しいのは、全て私たちの事を考えてくれているからこそだ。
もっと気を引き締めようと思った。
「奥野さん、盗聴器の事が気になりますので、この際ご自宅の捜索をしてみませんか? 機械を貸し出しますので、ご主人が仕事中で居ない時にでも、ゆっくりとご自宅で盗聴電波を探ってみて下さい。パソコン、USB、電源コード、時計等が割と怪しいです」
「はい、解りました。帰って実践してみます」
「機械は後ほど用意しますね。では、作戦会議と行きましょうか」
佐伯さんの一言で、会議が始まった。
先ずは資料を見るように言われた。昨日の尾行の様子がまとめてあり、るりと敦彦がホテルへ入っていく写真が一緒に添えられていた。
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