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「彼女の事は、もう信用できません」
彼の一言は重苦しいものだった。何度も何度も葛藤を経て、導き出した答えなのだろう。
一体、夫婦とは何なのか。幸せになりたくて一緒になった筈の相手から、死ぬほど苦しめられる日が来るなんて、誰が想像できるだろう。
いっそ他人のままなら、良かったのに。そうすれば傷つけ合う事も、涙を重ねる事も無い。
何時か想い出にできる日が来るのだろうか。この苦しい時を。
「お気持ち、お察し致します。辛いですね」
佐伯さんも沈んだ声になっている。親身に寄り添う姿は、やはり雄介との対人関係が良いものであることを示している。無機質な機械の様な業務スタンスではなく、雄介を救いたいという気持ちが見て取れた。
探偵の姿勢は相当厳しいけれど、人情味溢れる良い人なのだと感じる。
「いえ、すみません。愚痴っぽくて。もう大丈夫です。えーっと・・・・これから、僕はどうすればいいですか?」
「引き続き、るりさんの様子を伺っておいて下さい。彼女の持ち物――外出の際、よく利用する鞄等にGPS等を仕込むことができれば幸いですが」
「やってみます!」
「動きがあれば、僕に知らせて下さい」
「はい。解りました」
「山西さんはもう結構です。では続いて奥野さん、昨日ご主人は予定通りご帰宅となりましたか?」
続いて私への質問へと移った。
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