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検証の結果、何も変なアプリやGPS、メール転送の設定などはされていなかった。その後、雄介は一か月ほど充電の持つ小さなGPSを、私は盗聴電波探知機の機械を貸り、帰宅する事になった。
二人揃って帰る為、くれぐれも気を付けてと佐伯さんに念を押された。
何処で誰が見ているか解らないから、と。
「奥野さん」
「はい」
帰り際、そっと佐伯さんに呼び止められた。
「山西さんの顔色がよくありません。本当は僕が奥野さんを駅まで送って奥野さんは電車で、山西さんには車で別々に帰って頂きたいのですが、彼が心配です。近くまでご一緒頂き、様子を見て頂けませんか?」
「はい。私も気になっていました」
家に帰るのが苦痛なのだろう。雄介は帰宅時間が進むにつれて口が重くなり、青い顔色になっていった。
「山西さんにもお伝えしましたが、お気をつけて」
「はい」
深くお辞儀をして、雄介と共に車へ乗り込んだ。
午後六時も過ぎれば既に辺りは暗くなっていて、街灯が点いている。
住宅街を走る車内の空気は重く、私も雄介も黙って前を見つめていた。
「・・・・ごめん。少し、休んでもいいかな」
突然雄介が車を停め、彼が青い顔を私に向けた。
ドキリとする。今にも死にそうな顔――
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