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「今は苦しいと思う。この感情をコントロールするのは、容易い事ではないわ。でも、分かり合える同士――私がいるし、今現状の辛い事よりも、未来の楽しい事を考えるの! 今は、これから自分のやりたい事ができるような環境を整える為のプロセスだと思えばいいわ。プロジェクトは大きければ大きいほど、困難はつきものよ。でも、それを乗り越えて初めて達成されるの。だから、投げ出しちゃだめ。自分の為よ」
「自分の・・・・?」
「そうよ、雄介! 自分の為に頑張るの。貴方はずっと、人の為に生きてきた。もう山西家の為に生きる必要もないし、これからは自分のやりたい事をすればいい。不動産業を継がなくてもいいの。るりの夫の座は、欲しい人間にのし付けてくれてやればいいわ」
私の言い方がおかしかったのか、彼は少し笑ってくれた。
「映見の前向きな考え、いいな」
「でしょう? こんないい女を放置して浮気する見る目の無い旦那も、Rにくれてやろうと思って! じゃなきゃやってられないもの」
笑顔で言うと、雄介も頷いている。「言う通りだ。のしつけてくれてやろうか」
「そうよ。その意気! いい顔になった」
「ん。ありがとう」
「眩暈はどう? 少しくらいマシになった?」
「ああ。まだクラっとするけれど、映見と話したお陰で随分マシになったよ。さっきは視界がグルグル回っていて、あのまま運転を続けたら事故を起こしていたと思うから。俺が勝手に事故して死ぬのは構わないけれど、映見を巻き込む訳にはいかないからさ」
「恐ろしいこと言わないで! 次言ったら本気で怒るよ!? 事故なんか起こしたら、絶対に赦さないから!」
「ごめん。それより、すっかり遅くなってしまったな。急いで帰ろう」
「無理しなくていいわ。どうせ敦彦、帰り遅いもの。この所早くても十一時くらいよ。仕事だと思っていたけれど、それもどうかしら」
「るりも敦彦も、嘘吐きだな。全然気が付かなかったよ」
「本当にね」
旦那と親友をそんな風に思う日が来るなんて。本当に人生解らないものだ。
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