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それから安全運転で地元まで戻って来て、自宅から随分離れた場所で下ろして貰った。雄介と別れてすぐ、佐伯さんに連絡を入れた。遅くなってしまった経緯と、無事に地元へ帰って来た事を報告した。
辺りを見回した。先程から常に周りには気を付けている。怪しい人影や車も無いから安堵の息が漏れた。
このまま帰ってすぐに、借りた探知機で盗聴器の検索を行おう。
早く確かめたくて、速足で家路を急いだ。マンションに到着して郵便受けを確認し、エントランスを横切って二基あるうちのエレベーターのひとつへ乗り込み、駆けるように玄関まで来た。
鍵を差し込み、大きなギイイという音を立てる扉を開けると、リビングから灯りが漏れているのが見えた。
えっ、どうして・・・・?
慌てて玄関を見ると、敦彦の革靴が揃えて置いてあった。
なんで、どうして?
ドッドッドッド、と心臓が異常なほどに跳ね上がり、背中に冷や汗が流れた。
時刻は午後八時。敦彦は普段、帰っている時間じゃ無いのに――
玄関に突っ立っているのも変なので、仕方なくヒールの低いパンプスを脱ぎ、玄関に上がった。何も悪い事をしていないのに足取りは重い。一歩、また一歩とリビングへ近づくたびに、心臓がおかしい位に高鳴る。
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