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自転車を走らせた。行き先は、住宅街にある中くらいの大きさの公園だ。
ブランコ、滑り台とアスレチックとジャングルジムがセットになったようなカラフルな複合遊具、ベンチ、砂場のあるもの。私達が住んでいる世田谷区の地元は、駅名に『公園』と名が付いているくらいだから、大中小様々な憩いの場が数多く点在している。
私が今向かっている先の公園は、遠い昔、私と雄介でケーキを食べながら色々な話をした場所だ。
お互いの悩みを語り合ったり、楽しく過ごした場所。
公園を出てすぐ千歳通りに面しているから、エンジン音がするのはきっと他の車がまだ走っているからだ。マンションも多く立ち並んでいるので、帰宅する人も当然いるだろう。
家からさほど離れていないその場所に行くと、ベンチにぼんやりと座っている雄介の姿を見つけた。見当を付けた場所に居てくれて、ほっとした。
「雄介」
憔悴という言葉は、まさに目の前の彼の様子に当てはまっていた。吹けば飛んでいきそうに弱っていて、思わず駆け寄って顔を覗き込んだ。彼は散々泣いたようで、美しい顔に幾つも涙の筋が残っていた。
冷たくなった彼の手を握りしめ、優しく聞いた。「大丈夫なの?」
「・・・・あの・・・・ごめん・・・・電話するつもりなかったのに・・・・気が動転しててさ。気が付いたら・・・・ここに座ってて、映見に電話かけてた」
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