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ああ、惨めだなぁ。何時の頃からか満たされなくなった淋しい夫婦生活から、新しいスタートを切る為に自身にお金を掛けてお洒落をして、手料理は正直苦手だけど、今日の結婚記念日の為に本を読んで実践すべく用意を頑張ったし、豪華メニューでお祝いして、敦彦と久々に触れ合おうと思っていたのに。
不動産業界で働く彼は責任者になった途端、仕事のストレスと山のような業務と残業を抱えるようになった。
だから定期的にあった私との触れ合いも無くなり、ここの所夫婦生活はレスだった。
衝撃すぎて涙も出ない。シャワーを終えた敦彦は何事もなかったように、普段通りの夫の仮面を身に着けてリビングへ入って来る。今は涙が出ない方が良かったけれど、胸中は大嵐。
「へえ、豪華じゃん」
敦彦はスペイン料理が好きだから、パエリアに挑戦してみた。見た目だけは美味しそうに出来ているが、私はニンニクが苦手で味見をしていない。故に、出来上がりの良さは解らないけれど。
「乾杯して、早く食べよう。腹減った」
とっておきのシャンパンを開け、乾杯した。毒でも盛りたい気分にさせられる。
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