Diary1:始動

5/42
前へ
/340ページ
次へ
 危うく喉まで出かかった台詞を吐き出してしまいそうになった。しかしそれは良くない。急にパニックになって問い詰めても、ロクな事にならない事は実証済。  というのも、小学校の時からのるりと共に親友である八馬美奈子(やまみなこ)――美奈が、旦那の浮気メッセージを見つけて、その場で修羅場になったと聞いていたじゃない!  結局彼ら夫婦は離婚した。しかし浮気の慰謝料は貰えず、夫婦共有財産の折半という形で終わった。もともとの夫婦生活は破綻していて、浮気の証拠は何も押さえられなかったからだと聞いた。そういう時は、悔しいけどグッと堪えないとダメだ、とアドバイスを貰った。  私と敦彦は、すごく仲が良いからそういう事については無縁だよー、と言ってきちんと聞かなかった。  ああ、もっと美奈の話、しっかりと聞いておけばよかった、と今更後悔。  だから必死に、ネイルケアしたばかりの爪を太ももに突き立て、痛みを与えることによって爆発しそうな怒りを抑えていた。
/340ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4507人が本棚に入れています
本棚に追加