異世界転移

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異世界転移

「ありがとうございました」  深夜で来店して買い物を終えたお客が帰るのを見送り、私はレジから出て途中だった商品の棚入れを再開した。 「このお菓子新作じゃん。後で買おうっと」  苦学生な私は自らの学費と生活費を稼ぐため、深夜のコンビニに勤めていた。  今年、成人式を終えて20歳になったばかりだけれどお酒もタバコもやらないから、大人の仲間入りを果たした実感が湧かない。 「あ、ゴミ出ししとかなくちゃ」  帰る前にやっておかなきゃ忘れる仕事を思い出して、店内に誰も居ない事を確認する。  ゴミ箱から袋を交換して、ゴミを出しに外へ出る。外の寒さに身体が震えて来る。早く中に戻ろう。  ゴミをしまうケースに袋を入れて蓋を閉めた時だった。暗かったはずの足元が急に明るくなったのは。 「は? 何これ、もしかして魔方陣?」  幾何学模様の何かが光を発していた。その光が更に強くなり、私は思わず目を瞑った。  そして、次に目を開いた私の視界に移ったものは、コンビニやアスファルトではなく、日当たり良好な草原だった。 「嘘でしょ・・・、小説とかの異世界転移が私に訪れるなんて」  彼氏いない歴20歳の夢を見ない苦学生な私は、ある日突然異世界転移しちゃいました。  ~数時間歩いて辿り着いた街の外~  運良く街道を見付けて歩き続け、漸く人の居る街が見えてほっとする。鎧を着た門番が居るので話しかける。 「あの、お金が無くて働き口を探しているんですが何か有りますか?」 「見かけない服をしているね? この街に来たのは初めてなのかな。仕事の斡旋なら冒険者ギルドに行くと良い。ダンジョン関係の仕事なら人手不足で何時でも募集していたはずだ」  道を教えて貰い街に入る。本当ならお金を払う必要が有ったみたいだが、私みたいに働き口を探して街に訪れる者はそれなりに居るみたいで、札を渡された。  仕事に就いて、お金を貰った後でこの札に書かれた金額を払えば良いらしい。いきなり借金生活の始まりである。  冒険者ギルドらしき建物に着いたので扉を開けて中に入る。受付カウンターみたいな場所に女性が座っていたので、そこに向かう。  周りには正午くらいの日の出だった為か、閑散としていたが皮鎧や、ローブを身に纏った人達が掲示板の周りに屯していた。 「すみません。ダンジョン関係で、仕事の募集をしているって聞いたんですけれど」 「はい、ポーターと同じ様な荷運びから店員まで、様々な仕事をやって頂く方を募集しております」 「体力に自信がないので、荷運びは出来ませんが」 「ギルド専用のマジックバッグを貸し出ししていますので、重量は気になさらないで大丈夫ですよ」 「じゃあお願いします」 「ダンジョンに入る為には、冒険者登録も必要になります。登録はお済みですか?」 「いいえ」 「それでは此方の書類に必要事項を書き込んでください」  色の付いた厚い紙と羽ペンを渡された。冒険者登録って、私戦闘なんて出来ないのに良いのだろうか?
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