新店舗

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新店舗

 マスターだったオジサンからペンダントを受け取り、掘っ立て小屋の売り子に徹している間、商業ギルドの作業員達により店舗が造られていく。  冒険者ギルドの売り物が無事完売した後、新店舗を見れば既に完成して私の移動待ちだった。 「終わった様ですね。では此方のペンダントと交換してください」  私はオジサンにペンダントを返し、オジサマからペンダントを受け取り首に着ける。うん、ややこしい。 「今後は冒険者ギルドと商業ギルドで二足のわらじを履くんですね。頑張ってください」 「ありがとうございます。それじゃあ、新店舗の方に移りますね」  軽く挨拶してから移動して新店舗の前に立つ。掘っ立て小屋とは違い、しっかりとした造りの整った木材で綺麗に建てられた店舗は、まるでタイヤの無い移動販売所に見えた。  広い窓が三つもあり、三人が中に入っても余裕のスペースが保たれている。レジはないが、金銭のやり取りは窓毎に出来るように貨幣置き場が其々に置かれていた。  店舗周りに棚が延びており、其処に用途別で品物が陳列出来るようになっていた。棚の端に結界石が嵌め込まれており、かなりの広さまで結界が施されている。 「これ、どう見ても簡易結界には見えないんですが・・・」   「試作機として、導入してみました。一月の売り上げを想定した所、簡易結界でなくても採算が取れると践みました」 「ありがとうございます。期待に応えられる様に、販売してみせます」  私はマイ鞄から自分の品物を陳列していく。オジサマがそれを興味深そうに眺めている。いや、暇なら手伝ってよ。 「準備完了です。只今より販売開始します。今日は私独りで売り子をしますが、反響が多ければ増員しますので、是非ともご購入宜しくお願いします」  早速女性冒険者が店に群がる。品揃えはバッチリだ。今迄の傾向を踏まえて更に拡充してある。一人が落とす金銭の量が増えれば、それだけ売上げが伸びる。  長期戦に持ち込みたくても、手荷物が増えればそれだけ行進が遅くなり、消費が嵩む。しかし、此処で補充するのを前提で身軽な状態で入れば、それだけ消費を押さえられる。  女性陣はその辺抜け目がなく、私のお店で買うことを前提にしていた様で、生理用品が飛ぶように売れる。むしろ拠点と見なしている節がある。  下手な宿より物資が整っているし、何より即座に清潔に出来る設備有り。後足りないのはフカフカのベッドだけだろう。  試しに折り畳みのベッドを鍛冶ギルドに依頼して作らせてみようかしら? ウォーターベッドにすれば外側だけで嵩張らないし、以外と受けるかも。  新たな計画を心に留めて、新店舗は幸先の良い一歩を踏み出せた。
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