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鍛冶ギルド
翌日、オジサン達に教えて貰った鍛冶ギルドに向かう。うろ覚えで描いた折り畳みが出来るベッドと、空気の変わりに水を中に入れる敷き布団の設計図を持って。
門前払いされると困るので、一応二人のギルドマスターから紹介状は頂いている。交渉が上手く行かなそうなら突き付けるつもり。
朝から金属を叩く高い音を響かせ、工房内は炉の熱で蒸し風呂の様。入口付近で来客を告げる鐘を鳴らして、作業中の職人に私の存在を気付いて貰う。
「こんなむさ苦しい場所に何の用だい、嬢ちゃん?」
火花から目を保護するゴーグルを外して私の前に進み出てくれたのは、髭を伸ばした身体は小さいが、がっしりとした筋肉質の老人。オジイサマだった。
「此方の二つを造って頂けないかご相談に来ました」
私は拙い設計図の絵が描かれた紙をオジイサマに渡す。それを受け取り眺めるオジイサマは唸り声を上げた。
「・・・むう、完成度が高いじゃねえか。しかも、鉄より軽い金属を使って重さを軽減しつつも、耐久力がある繋ぎ目。素人が考えたとは思えん」
「値段を度外視するならばミスリルを使えば良いのでしょうが、それだと普及させるには不向きでしょうから、安くて軽く、腐食し難い金属は無いでしょうか?」
「武器には不向きだが、軽鎧に使っている金属なら有るぞ。値段も鋼に比べたら随分とお手頃だ」
「敷き布団の素材も合わせて、抱き合わせ価格を金貨二枚程度に出来ますか?」
「水漏れしない肌触りを考えて皮以外の材質で、安い物か・・・。引火し易くて外装に不向きなもんがあるな、それなら多少安くて済むぞ」
多分、チタンとポリエチレンだと思うが詳しくは知らないので相槌だけする。利益が出るなら完成品を見る迄はお任せだ。
一週間で造ってくれると言うのでお願いした。前金として、金貨一枚を渡して立ち去る。紹介状は必要なかった。
~私が出ていってからの鍛冶工房内~
「この二つの材料費用は確かに金貨一枚以下で収まるだろうが、技術と発想の対価は金貨十枚でも足りんぞ。何者じゃ、あの嬢ちゃんは?」
「マスターが発注を受けるなんて何事かと思いましたが、この設計図を見たら納得ですわ。俺等が逆立ちしたって描けねえ完成度でさあ」
「バカ野郎。そんなんだから何時迄も弟子から抜け出せねえんだ。さっさと一人立ちしやがれ、お前達」
「鋼の武器と金属鎧の二つを売り物レベルで造れないと合格にしてくれない、マスターが悪いんですよ」
「他の鍛冶屋だったら鉄の剣と非金属鎧で済むんですぜ?」
「他の街で大成したけりゃ、そのくらい出来なきゃやっていけねえぞ。文句があるなら出ていけ」
「誰が出ていきますか。マスターの直弟子は国レベルで引く手数多。技術をしっかり学ばせて頂きますぜ」
「け。おい、手の空いている奴集まれ! 試作品を今から造るぞ。完成するまで眠れないと思えよ」
「「「がってんでさあ!」」」
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