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報酬の使い道
「お仕事ご苦労様でした、此方が報酬になります。お納めください」
冒険者ギルドに戻り鞄とペンダントを返すと、受付の女性から硬貨が入っているだろう袋を渡された。
「札のお金は何処で支払えば良いか、教えて貰えますか?」
「札は此方で回収します。報酬は差額分ですのでご安心下さい」
札を渡して、晴れて借金がなくなった。食事と宿屋を探さないと。
「街の事はまだ知らないようですから、お薦めの宿を紹介しましょう。夕食と朝食が付いて、銀貨二枚と良心的ですよ」
ギルドのオジサンに薦められるまま、宿に案内して貰った。宿舎が隣だと言われては断れない。
お薦めなだけあり、食事は美味しかった。部屋も清潔で申し分無い。唯一不満があるとするなら、お風呂がないこと。しかし、これは仕方がない。
風呂場を所有出来るのは貴族くらいで、街民は公衆浴場で入るらしいから。明日絶対入りに行こう。
袋の中身を確認して、寝る前に部屋を取る序でに追加で支払い、用意して貰った水桶と手拭い。軽く身体を拭いてベッドに転がり込む。
おやすみなさい。
翌日、朝食をとった後で今日の宿泊分を先払いして、街を散策する。ダンジョンに入って解った事がある。ポーターが居ないパーティーは、本当に必要最低限の荷物しか持たないため、食糧以外の生活必需品をほぼ諦めている。
私と同じ位の年の女性冒険者も少なからず居る中、あの掘っ立て小屋で売られていた商品では、足りない物が多すぎるのだ。
なので私があの時、有れば助かったと思えた品物を探しに、雑貨屋を目指していた。朝市の食材を物色しつつも、店主に話を聞きながらお昼に使う諸々の買い物をする。
持てる限りの、袋に満載の食材を手に冒険者ギルドに向かう。アレコレ買い物するには、あの鞄があった方が便利だ。
運良く、昨日と同じ仕事が有ったので鞄を借りて食材を詰め込む。朝な為か、冒険者が沢山居たので護衛の人員は直ぐに揃ったが、行きたい場所を告げるとダンジョン前で待ち合わせることになった。
雑貨屋は冒険者ギルドから程近く、中には入ると冒険者と思わしき人達が結構居た。私が必要だと思った品もちゃんと有り、カウンターに持っていってから一声かける。
「すいません。寸胴鍋と調理器具を一揃え欲しいのですが」
「これだけ買ってまだ持ち運べるのかい? ああ、ギルド専用の鞄を持っているなら大丈夫か」
店主のお婆さんは納得したのか、小間使の男性を呼びつけて品物を持って来させた。
「全部で金貨一枚だよ。中々豪勢な買い方をするねぇ」
「ダンジョン内での商品が余りにも少なすぎたので、多分全部捌けると思います」
現代コンビニの品揃えに比べたら、まだまだ序の口なのだから。
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