ラインナップ

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ラインナップ

 翌朝、宿を引き払う。少し奮発して高級な宿を昨日の内に紹介して貰ったので、足を運ぶ。 「はい、此方は風呂付きで一泊金貨一枚です。朝食は終わってしまいましたが、昼食として部屋にお運び可能です」  私は支払ってから、部屋の鍵だけ受け取り外出する。今日はダンジョンには入らず、街の調査を目的としたウィンドショッピングだ。  流石に服も下着も、同じのを気続けるのは限界だ。昨夜は公衆浴場を使ってみたが、近年の銭湯と比べると人の多さに驚く。そして、石鹸しかない。  シャンプー、リンスが恋しい。服と美容品の確保は急務と判断した次第。予算は金貨二枚までと決めて、いざ店の扉を開く。 「いらっしゃいませ」  先ずは服屋。何着か安めの物を見繕い、下着に着手する。うん、可愛くないや。デザイナー居ないんだろうなぁ。適当に選んでかなり多めに纏め買い。 「ありがとう御座いました」  さて、次は美容品。残った予算で何れだけのものが買えるか。今日買えなくてもダンジョン生活を続ければ、何時かは買えるだろうけれど。  美容院みたいな店は見かけなかったが、きっと城の有る国や貴族御用達の高級路線な場所なら、有るのだろう。私が立ち入ることは出来そうもないですね。  色々な店舗を眺めて、漸く目ぼしい店を見つける。中に入り、用途を聞き値段と様相談。見事お肌のお手入れに必要な、薬用エキスを手に入れた。が、お財布は軽くなった。  宿に一度戻り、部屋に戦利品を置いて昼食。やはり昨日の宿より食事が美味しい。小休止を挟み宿を後にして調査再開。  夕方まで街を練り歩き、人々の生活を垣間見る。店で売られている物、値段と数。冒険者達がダンジョンで買う商品の値段が、如何に高いか痛感する。  冒険者ギルドで依頼が必要なのは、安全と輸送手段が快適だとしても、精神的負担は街中の日常とは比較にならないからだろう。  私が依頼を受けなければ、多分他の人はやらないだろう。ギルドのオジサンが目の下にクマが出来るほどに負担がかかっていたのだから。  明日は依頼を受けて、労ってあげよう。宿で夕食を取り、風呂に入って肌のお手入れを済ませ、新しい服と下着とフカフカのベッドに包まれながら就寝。  朝食を済ませた後、ダンジョンで商売するための買い物に、残りの財産が要るので宿を引き払う。一泊だけの贅沢でした。  食材を買い込んでから冒険者ギルドに立ち寄れば、案の定依頼は残っており、鞄を借り受け護衛の冒険者達とはダンジョン前で待ち合わせにして、雑貨屋へ。  寸胴鍋を追加で購入して、穴だらけの器具にホースと囲いになる折り畳み式の天幕を見繕う。簡易シャワー室だ。
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