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マン喫
漫画喫茶は敷地の広いお店だと、シャワー室が完備されており、さっぱりした状態で仮眠が出来る。
漫画を読まないで勿体ない、と思われるかもしれないが、侮るなかれ。
カプセルホテルよりも漫画喫茶。私にとっては、リクライニングチェアーでゆったりとまどろめる、低価格な宿屋代わりでした。
話を戻して、ダンジョンです。
買った諸々を鞄に詰め込んで、安全地帯に辿り着いた私は、護衛の冒険者達と別れて、掘っ立て小屋に居るギルドのオジサンと合流。
独りで切り盛りした疲労が目の下のクマに現れていたオジサンが、私の到来を諸手を挙げて歓迎する。
取り敢えず、補充を終わらせてからペンダントを受け取り、接客を交代。お昼前には全ての商品が無くなった。
先にシャワー室を設置してから、寸胴鍋を取り出す。ホースの先に給水ポンプみたいな器具を取り付けて寸胴鍋の中に投函。
「火魔法と水魔法を使える方、いらっしゃいますか? お湯を浴びれる簡易浴室を設置したので、ご協力願います」
「何々? 面白い事考え付くわね。私は火魔法が使えるわよ」
「アタシは水魔法。勿論、使わせて貰えるのよね?」
「はい。此方の寸胴鍋に水を一杯にお願いします。火魔法は鍋の水を沸かす感じでお願いします」
寸胴鍋に水が入ると、シャワー室から小さな穴を通して水が出てくる。火魔法で鍋の水が温かくなると、シャワー室から湯気が立ち始める。
「一度、火魔法を止めて下さい。どちらから先に入られますか?」
「じゃあ、私から。湯加減の調整も兼ねて試させて貰うわ」
「替えの下着をどうぞ。さっぱりした後で、前のは着けたくないでしょうから」
「気が利くわね。有り難く頂戴するわ」
下着を受け取り、シャワー室に入ってから服を脱いで身体を洗い始める火魔法の冒険者。
「あー、生き返るわー。ダンジョンの中で湯浴出来るなんて最高。しかも沢山の小さな穴から、細かにお湯が出ていて浴びやすいわね」
「ちょっと、早く交代してよ。アタシだって入りたいんだから」
「はいはい。もう少し湯加減を熱くしても大丈夫そうね。着替えたら少し火魔法を使うわよ」
「中のお湯が半分以上残っているから、アタシが入った後にでも水魔法で足しとくわ」
ホカホカになった彼女と交代して、下着を受け取りながら入る、水魔法の冒険者。
「う~、あ~、キモチイイ~。戦闘での汚れが綺麗に洗い流されていくわ」
天幕で隠れてはいるが、艶かしい声は駄々漏れな状態である。男性冒険者達の姿勢が少しばかり屈んでいるのは気のせいだと思おう。
二人が大満足した後、料理の方にも水魔法と火魔法を使わせて貰い、調理中にシャワー室を使いたがる冒険者が列を作って待機していた。
利用料は銀貨一枚にしてみたが、この並び様。先頭に並ぶ女性冒険者達には下着も銀貨一枚で提供してみるも、全員が購入。
料理が出来上がる頃には、小綺麗になった方達が雑貨屋で買い揃えた商品もお買い上げくださり、在庫はすっからかん。
協力者の二人とオジサンにはタダで配った料理もあっという間に無くなり、売り上げは過去最高となった。
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