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ギルドのマスター
「金貨二十枚と登録完了ですので、此方のマジックバッグをお渡しします」
金貨と書類を渡し、鞄が手元に残る。むふふ、マイ鞄。
「そう言えば、商品の買い揃えはどちらで?」
「冒険者ギルド近くの雑貨屋です」
「成る程、その後はダンジョンですか?」
「はい。護衛をしてくれる冒険者の方達と待ち合わせしています」
「ダンジョンの中へ行かれる時は私と彼女、それに作業員数名も同行させて頂きたい。勿論、此方の心配は無用です」
「それじゃあ、また後でお会いしましょう」
私は商業ギルドを出て、雑貨屋に行く。さくさく買い物を済ませてダンジョン前に到着。
何やら人だかりが出来ていた。その中心に商業ギルドで会った人と護衛の冒険者が混じっていたので、声をかける。
「お待たせしました」
「いいえ。私達も先程来たばかりですよ」
「マジかよ。本当に商業ギルドのマスターと一緒に行くのか」
「あの、暗殺者が裸足で逃げ出す敏腕秘書も、オマケで付いているぜ」
「作業員の奴等なんか、商業ギルドお抱えの凄腕護衛じゃんか」
お、おう。実は物騒な面子でしたか。護衛の冒険者達が萎縮していますよ。
「早速行きましょうか。何、道は覚えていますから先導しましょう」
秘書を先頭に私が真ん中で、冒険者が殿の大所帯で安全地帯に向かいました。
道中に出てきた魔物は、秘書が投げた何かで簡単に倒されていくので、とても安全な一時でした。
「二種のギルド専用マジックバッグを持って、更には団体も一緒に引き連れて来られるとは、驚きですね」
掘っ立て小屋に居たギルドのオジサンが、私達に気付いて声をかけてきた。
「冒険者ギルドのマスターが、こんな所に居る方が驚きでしょうに」
オジサマが返答する。なんと、オジサンもマスターでしたか。
「ははは。現場にいた方が、冒険者達の実情を良く知れますから。それに、腕も鈍りませんし」
「オイオイ、俺らのトップが店番なんかしていたのかよ」
「え、気付いていなかったの? 指名依頼とかで顔合わせしたなら、知っていて当たり前なんだけれど」
「俺は指名依頼受けれる程、強くねぇよ」
ギルド職員としか聞いていなかったけれど、まさかのトップでしたよ。本人の言はともかくとして、人手不足なのだろうか。
「本当は書類仕事が嫌で、自分に押し付けていると愚痴を溢していましたよ。職務怠慢では?」
秘書が、冷淡にオジサンへ進言する。
「ギルドは違えど、同職仲間で飲みに行っているのは知っていましたが、ウチの秘書がそんなことを。平時は私の裁量で何をするも自由ですから、怠慢にはなりませんよ」
書類仕事が嫌なのは、否定しないんですね。私は話を聞きながらも、鞄から商品を出していました。
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