番外編 遠くても

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番外編 遠くても

 中3の冬休みは、せっかくの長期の休みなのに最高に楽しくない冬休みだと美鈴は思う。この休みが終わったら高校受験が待っているからだ。  つまり、せっかくの長期の休みを大嫌いな勉強ばかりをしなきゃいけないということだ。でも、特に夢も学びたいこともない美鈴にとって受験勉強も高校進学も義務的なものとしか思えなかった。  高校生になったらとりあえず真面目に授業を受けて放課後は部活もせずに家で漫画を読んだり遊んだりして卒業したら適当に入れるところに就職して働く。美鈴には、そんな未来図しか描けなかった。  学校や仕事や勉強だけが全てじゃない。それが15歳の美鈴のポリシーだった。  だから、他の子みたいに本気になれなかった。  テストの点数は相変わらず1桁台も普通にあるし良くても30点台。それも正解しているのは記号で答える問題ばかりで自分で見ても当てずっぽで解きました感があった。  9科目どれも嫌いなのって自分くらいだと美鈴は思う。好きなことは、漫画を読むことと美味しい物を食べること。あと、母親がもっと自分にお金をかけてくれるならゲームが3つ目の趣味だと言いたいところだ。  それくらい美鈴は学校の勉強に無関心だった。  だから、終業式後の学年集会も終始寝て過ごした。  今だってめんどくさくて配られた学年頼りの裏に下手な絵を描いて落書きをしていた。先生が受験の話をしても冬休みの過ごし方の話をしても美鈴は無関心だった。面倒くさい。  でも、そう考えているのは美鈴だけではなかったようで右斜め前に座っている翼は教科書を読んでいるフリをして漫画を読んでいた。それを見て自分もそうすれば良かった、と思う。  多分、高校受験の時期に漫画を読んだりしているのは全国どこの中学校を探しても自分達くらいだろうと思う。  それでも何の受験対策もせずに適当に高校を受けようとしている訳ではない。  担任の先生がうるさいから夏休みに翼と2人で公立高校のオープンスクールに行った。そして、彼とは秋にも私立高校のオープンスクールにも行った。面接の志望理由も2人でパソコン室でホームページを見ながら考えたし、担任の先生が成績が悪くて授業もまともに受けない自分達のために用意してくれた対策プリントも1回だけだけど2人で解いた。  一応、やることはやっているのだ。だから、何もしていない訳ではない。
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