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番外編 恋に溺れる私
恋は盲目だと思う。好きな人ができるとその人しか見えなくなる。
例え望みが薄くても、未来が見えなくても、ダメな恋だと分かっていても好きな人しか見えなくなる。私にはその人しかいない。そう思ってしまう。
私は、今日もそんな恋という名の海に溺れている。
恋という名の海に溺れる私は、這い上がれなくなるくらい溺れて乱されていく。
恋とはそういうもんだ。
特に初恋なんて尚更そうに決まっている。
________
15年越しの想いは翼の「ごめん」と言う言葉と共に呆気なく終わった。
分かっていた。そう言われる可能性が高いことは分かっていた。
もし、15年前にもう少し素直になれていたら違う未来があったのかもしれない。
もしそうだとしたら翼は転職なんかしていなかったかもしれないし、美鈴だってフリーターではなくちゃんとどこかの会社の社員として働いているいたかもしれない。たらればの話だけど。
一人暮らしをするアパートまでの道を1人で歩きながらスマホの画面をつける。
好きなバンドの情報を集めるために登録だけして特に何も投稿していないInstagramには、今日も中学や高校の同級生の投稿で溢れかえっていた。
美鈴は、昔から男女と問わず誰とでも仲良くなれる性格で友達も多く友達関係に困ったことは一度もなかった。でも、それは20代前半までの話だ。20代後半から30歳になった今は、それが逆に短所にも思えてきた。
美鈴にとっては暇な時に眺めるだけのInstagramも同級生にとっては、自己表現の場所であるらしい。その証拠に流れてくる投稿は、惚気話か子供の話ばかりだ。
芸能人のように良いところだけを写しているのは分かっている。だけど、見ていてイライラする投稿ばかりだった。
見ていて不愉快にならない投稿をしているのは、実家の愛犬の写真を載せている真希やアイドルへの推し活の投稿が中心の一部の友達だけで、大半は美鈴が聞きたくない内容の投稿だった。
今日もInstagramに流れてくるのは、デート先での写真や子供の成長に関する投稿ばかり。自分には無関係のことだし、その子達も自己満足で投稿しているだけだとは分かっている。
だけど、未だに「彼氏ができたことない=年齢」かつ失恋したばかりの自分に追い討ちをかけてきているようで見ていて惨めな気持ちになった。
「こんなのただの自慢グラムじゃん」
美鈴は1人で呟いてスマホをズボンのポケットに突っ込んだ。芸能人でもないのにカッコつけているみんなのことが何となく許せなかった。
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