番外編 恋に溺れる私

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「それよりさ、美鈴」 「ん?」 「中学の同級生のインスタって知ってるの?」 「同級生?今も仲良い人は交換してるけど」 「そうじゃなくて…」  そう言いかけて、翔太は周囲をきょろきょろ見渡した後声を潜めた。 「美鈴の好きな人…あ、もう彼氏だっけ?」 「かっ…」  彼氏じゃない。連絡は取ってるけどこの前振られた。ただの友達。  言いたいことはたくさんあったけど、言葉が詰まった。失恋したショックと本当にそう言えたら楽なのにという欲望が心の中で混ざる。 「その反応だと付き合ってる感じ?」  翔太にニヤニヤした顔で聞かれて美鈴は首を左右に振った。 「私の現在進行形の片思い」  あえて「振られた」とは言わなかった。それを知ったら余計に揶揄ってくるに違いない。  美鈴も翔太のことを散々いじっているからお互い様と言えばお互い様ではあるが、こればかりはいくら翔太でも話したくなかった。  翔太もそれは察したのか「ふーん」とだけ返し味噌汁を啜った。 「なら、まだ美鈴はフリーってことなんだな」 「翔太もじゃん」 「うーん、まぁ確かにそうなんけど」 「そうなんだけど?」 「いや、なんでもない」  翔太は返事を濁すと唐揚げを頬張った。  この反応は、絶対何か隠してる。  実はインスタに書いてないだけで、好きな人がいるのかもしれないし彼女がいるのかもしれない。もしそうだとしたら翔太の好きな人や彼女は美鈴と2人で会っていることをよく許してるなと思うけどそれ以上は考えないでおいた。 「ま、今度同級生にあったらインスタ交換してもらえないか頼んでみたら?」 「なんで私が」  翼のインスタなんか見なくてもある程度想像がついた。生前の香奈さんの写真を載せて思い出に浸っているか、美人な女性芸能人の推し活の様子を載せてるかの2択に決まっている。  少なくとも美鈴の知っている頃の翼ならそういう投稿しかしてないないと思う。  だが、そんなことを知らない翔太は楽しそうな笑みを浮かべた。 「そいつとインスタ交換したら俺にも見せてよ」 「なんで?」 「美鈴の好きな人にちょっと興味あるから?もちろん、そいつには内緒でね」 「分かった」  真希や他の女友達ならともかく、男友達の翔太がなんでそんなに翼に興味があるのか少し不思議に思う。  それを感じとったのか翔太は「変な人だったら困るしさ」と言葉を付け加えた。  正直、周りからみたら彼氏と勘違いされそうなのは翼より美鈴を心配している翔太な気がする。  でも、翔太はただの男友達でたりお互い恋愛感情はないことは分かっている。翔太は美鈴がしっかりしてないから心配しているだけだ。
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