最終章 この恋が罪だと知ってても

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「彼女できてると思う?」 「翼のことだからねー。好みの女の子を口説いたりはしてるかもね」  そう言って笑ったぐっちに対し美鈴はムッとした。  確かに翼は、綺麗な顔立ちの先輩や可愛い顔立ちの同級生や下級生を口説いたりすることはよくあった。そして、口説かれる側もチャラチャラしているとはいえイケメンに口説かれて嬉しかったのか喜んでいる子も多かったと思う。そして、その度に必死に彼とターゲットの女子生徒の邪魔をしていたのも懐かしい。翼には、その度に文句を言われてたけどそれが素直じゃない自分のアプローチであったことも確かだった。 「その辺の可愛い女の子を口説くくらいならグラビア雑誌のお姉さんが好きって言ってる方がマシ」 「それにしては、美鈴結構怒ってなかった?いつだっけ?中2の夏休みとか」 「そんなことないもん」  本当はそんなことあった。  中2の夏休みの登校日の日に仲間の男友達の1人が高校生のお兄さんの部屋にあったというグラビア雑誌を学校に持ってきたことがあった。それを見て1番盛り上がっていたのは、お兄さんの雑誌を勝手に持ってきた男友達本人ではなく翼だった。 「俺やっぱ付き合うなら年上のお姉さんがいいかも」  そう言った翼から美鈴は無言で彼の読んでいたグラビア雑誌を取り上げると彼が誉めた女の人の写真を見た。  派手なデザインのビキニを着た胸の大きいそのお姉さんは所謂キレイ系のギャルで臍にはピアスをしていた。メイク濃いし怖そうだしこのお姉さんのどこが良いのか美鈴には全く分からなかった。 「これのどこが良いの?」 「胸の大きいところ」  美鈴の問いかけに雑誌を持ってきた男友達が即答する。だが、美鈴は「違う」と言って翼をギロっと睨みつけた。 「は?俺かよ」 「だって翼がこのお姉さんと付き合いたいって言ったじゃん」 「だからそれはさっき言っただろ。年上なところとか」 「他にもあるでしょ?胸が大きいとか綺麗とかセクシーとか」  そう言ってグラビア雑誌を思い切り黒板に投げつけた美鈴に男子達は「あーっ」と声をあげた。 「こんな雑誌見てるそっちが悪いんだから!」  そう言ってわざとグラビア雑誌を踏んづけて教室を出たことがあった。  美鈴はそんなことはなかったけど、他の女子がテレビに出てるイケメン俳優とかアイドルを見て「カッコいい」と口にするのと同じ感覚なことは分かっていた。でも、やっぱり好きな人には自分だけを見ていて欲しいのが本音だった。  それは、会えなくなった今も同じだ。 「ぐっちは、私の行く高校を翼受けてると思う?2学期までは志望校同じだったんだけど」 「どうかな。転校したから変わってるかもね」  そこを「いるかもしれないよ」ではなく「変わってるかもね」と現実感のある言葉を発したのは彼女なりの優しさなのだということは分かっていた。でも、そこは「いるかもしれないよ」と言って欲しかったなと思う。  そしたらもし向こうの中学校で彼女をつくっていても自分の方が仲が良いんだって彼女に見せつけることができただろうし言い方は悪いけど略奪だってできそうな気がした。 「恋愛って難しいね」  そう言ってまた机に伏せた美鈴にぐっちは「そうだね」と同情してくれた。
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