ケリーの章 ㉒ 待ちわびていたプロポーズ

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ケリーの章 ㉒ 待ちわびていたプロポーズ

 ヨハン先生に言われて、私は自室へ戻る事になった。 「申し訳ございません、ヨハン先生。先生はお忙しい方なのに…」 頭を下げるとヨハン先生が首を振った。 「何を言っているんだい?むしろ僕のほうがケリーに謝らなければならないよ。僕は医者でありながら…他の患者さんを診察しなければならないからケリーの看病をしてあげることが出来ないのだから…」 申し訳無さそうにヨハン先生が言う。 「いいんです。ヨハン先生はこの町の…『リンデン』の町の先生なのですから。私はただの風邪ですから、寝ていればすぐに良くなりますから」 「だけど、ケリーはずっと健康だったから…心配だよ。とりあえず部屋に戻って今日はゆっくり休むんだよ。今熱冷ましの薬と水差しを用意してくるから」 ヨハン先生は慌ただしく、診察室へ向かい…すぐに厨房へ戻って来た。手には薬の入った包み紙と水の入った水差しを手にしている。 「よし、ケリー。僕がこれを部屋に運ぶから一緒に2階へ行こう」 「はい、ヨハン先生」 そして私はヨハン先生と一緒に2階へ向かった。 「ケリー。いいかい?熱が高くて具合が悪くなったら薬を飲むんだよ?」 「はい、ありがとうございます。もう大丈夫ですから行って下さい。後40分で診察時間になりますよ?」 私の言葉にヨハン先生が申し訳無さげに頷く。 「そうだね…ごめん、ケリー。それじゃ僕は行くね」 「はい、ヨハン先生」 頷くとヨハン先生は部屋から出ていった。 「ふぅ…」 それにしても体が熱くてフラフラする。着替えをする気力も無かった私は部屋着のままベッドに潜り込むと、そのまま眠りについてしまった―。 **** 「う…ん…」 額に冷たいタオルが乗せられた感覚で目を開けた。するとそこにはローラさんが心配そうな目で私を見つめていた。 「え…?ローラ…さん…?」 「あ、ごめんね。ケリー。起こしてしまったかしら?熱が高そうで苦しそうに見えたから濡れタオルを乗せたのだけど…目が覚めてしまったわね?」 「い、いえ…冷たくて気持ちいいです…でも、何故ローラさんがここに…?」 「実はね、ヨハン先生から電話を頂いたのよ。ケリーが風邪を引いてしまったから、もし都合が良ければ様子を診てもらいたいって」 「ヨハン先生が…?」 先生…そこまで私を心配してくれて…? 「あ…でも、ローラさん…お子さんたちは…?」 「子どもたちはいいのよ。ジャックとフローネは学校に行っているし、アメリアならオリバーが今日は仕事が休みだから見てくれているから」 「そうなんですか…何だかすみません…」 するとローラさんは言った。 「まだ熱が高いわね。ゆっくり休むのよ?ヨハン先生とケリーの昼食の準備をしてくるから何も気にしないで寝てなさいね?」 「はい…ありがとうございます…」 「いいのよ。それじゃあね」 ローラさんは笑みを浮かべると部屋を出ていき…途端に部屋の中は静まり返り、何だか寂しい気持ちが込み上げてきた。 シンとした部屋で1人ベッドに横になりながら私は思った。 アゼリア様も体調が悪い時は1日ずっと1人でベッドに横になっていた。 その時…どんな気持ちでアゼリア様は静かな時を過ごしていたのだろう…と―。
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