旅路(1)

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 胸の奥底に芽生えた欲望と主君への忠誠との狭間で悩みつつ、夜をやり過ごしたゴディウィンだが、結局旅を続けることにした。夜明け前になって、ようやくアリアーネが眠りに落ちたのを見計らい、朝食代わりになりそうな木の実や果実などを探しに出た。自分のいない間に彼女が目覚めて、姿を消していたらと大急ぎで戻ってきたが、王女は相変わらず眠り続けていたので、ゴディウィンはほっと胸を撫で下ろした。朝日を浴びて大地に横たわる彼女は目映いほどに美しい。  だが、アリアーネがふと目を開いた時、ゴディウィンは馬の世話に余念がない様子を見せていた。彼女のすぐ側には木の枝で器用に編んだものを皿の代わりにして、森で集めた木の実と果実が置かれている。怪しみながらも手を伸ばし、口に運んでみたが、あまりの酸っぱさに顔を大きく歪めた。それを見て、ゴディウィンは声をたてて笑い、  「クァンの実を食べるのは初めてか?」  と、づかづかと歩み寄るや赤紫色の実をつまみ上げ、自らも口に放り込んだ。  「それを食べ終えたら、出発するぞ」  「どこへ向かうつもり?」  クリスティアが素早く問い返す。  「ガレルだ。ナレン軍はそこに駐屯しているんだ。キーリングル側から言えば、ちょうどジアドから東に抜けた辺りか」  「ジアド────」
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