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アリアーネはかすかに身を震わせた。そんなにも遠い所へ行くつもりなのか? ハーメットしか知らない彼女から見れば、もはや未知の世界としか言いようがない。
「お願い、私をハーメットに返して」
ついに王女の誇りを擲って、フェルディオの足元にひざまずくなり両手を組み合わせた。
「私は女神ハーミアの巫女で、女神そのものなどではない。私を連れていったところで、戦の結果に何の変わりももたらしはしない」
「俺の勘が正しいかそうではないかは、ガレルへ着けば自ずと分かる」
と、ゴディウィンはクリスティアを見下ろした。
「頼むから、手間を取らさないでくれ。大人しくついて来てくれるなら、あんたに危害は加えるつもりはない。だが、あくまで逆らう気でいるのなら仕方がない。縄で繋いで連れていく。市で買われた奴隷のように」
「何が欲しいの?」
声を震わせ、なおもアリアーネが食い下がる。
「黄金? 宝石? それとも剣や武具? 神殿の宝物庫にはいくらでも金銀財宝があるわ。私をハーメットに返してくれるならば、お前の欲しいものは何でもあげる」
「何でも?」
ゴディウィンは僅かに頭を傾け、
「あんたの望みを叶えたら、俺の望むものをくれるのか?」
「えぇ。宝物庫の中から何でも好きなものを選ぶといい。ハーメットの神官は私を取り戻す為なら、たとえ神殿の秘宝であってもお前に渡すでしょう」
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