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「何ですって?」
「女神ハーミアに裁きを委ねる。神聖かつ正式な決闘だ。開始は太陽が最も高く登る刻、どちらかがどちらかの息の根を止めて勝負は決まる」
「待って。そんなの不公平だわ。ゴディウィンは片腕しか使えないのよ」
「女神がマラッドの肩を持つならば、片腕ぐらいハンデにもならんだろうよ」
カルガースはにべもなかった。
「君の仕えるハーミアに審判を委ねるのだから、君も文句はあるまい?」
話し合いが上手くいかない場合、神々に審判を委ねることは決して珍しいことではない。手段が決闘というのもよくある話だ。しかし、どう考えてもカルガースの方が有利だ。ゴディウィンは縄を解かれたが、これからカルガースとの決闘が待っていることすら分かっておらず、ぼんやりとしている。誰かに自らの剣を手に押しつけられても、何のことやら戸惑いを隠せない。
たまらず、アリアーネはゴディウィンに駆け寄った。
「ゴディウィン、聞いて。これから、あなたはカルガースと戦わないといけないの」
「たた……かう?」
ゴディウィンがおうむ返しに繰り返す。
「そう。剣を持って。これで戦うの」
アリアーネはゴディウィンの右手を掴んで、軽く揺すった。
「思い出して。昔、肉食獣の群れと戦ったことがあったでしょう? あの時のようにするの────お願いだから」
ゴディウィンかカルガースのどちらかが死ぬまで、戦いは終わらない。どちらも大切な人に違いないのに。
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