決闘

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 カルガースについてきた人々にとって、カルガースは無くてはならない人。新しい都ハーマハバラの繁栄と、キーリングル再興を担う人なのだ。  けれども、ゴディウィンは私にとってかけがえのない人。一度は死んだと諦めた────だけど、こうして生きていてくれた。二度も彼を失うなんて堪えられない。  『どうしたらいい? どうしたらこの決闘を止められる?』  カルガースと結婚すること以外で、私に出来ることはないの?  この間にも、儀式の準備は淡々と進められている。広場は綺麗に掃き清められ、大地にはワインが注がれた。  「ハーミアに問う。ここに二つの誓いがある。どちらが女神の意にかなったものか、我らの戦いにおいて示したまえ」  太陽がちょうど天空の頂点に達したと同時に、物々しくカルガースが宣言した。カルガースが広場の中央に立つ。前に押し出されようとするゴディウィンの手に、アリアーネは急いで黄金の環を滑り込ませた。  「これは私の心よ。忘れないで、ゴディウィン」  はっとしたように、ゴディウィンはアリアーネを見返した。何かを懸命に思い出そうとしていたが、そんな時間は彼には残されていなかった。男たちに囲まれて、ゴディウィンはカルガースの前に立った。  頭半分、カルガースの方が背が高かった。それだけでない、体格も骨太で大柄だ。キーリングルで名の知れた戦士であったカルガースが負ける要素など、どこにも見当たらない。  
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