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一方のゴディウィンは、どちらかと言えば細身だった。しかも、火傷の後遺症で左側の腕は使えず、左足も僅かながら引きずっている。カルガースの大きな剣を避けるだけでも、彼の体力は奪われるようだ。開始からそれほど経たずして、勝負の決着がつくと誰もが────アリアーネでさえ────思った。
しかし、意外にもゴディウィンはしぶとかった。カルガースの剣を避ける内に、自分もかつてはナレンの戦士だったことを本能的に思い出していた。カルガースよりももっと体格のいい相手と戦ったことだってあったのだ。左側の動きはきごちないが、右側の方は俊敏で躍動的になってきた。
ゴディウィンはカルガースを疲れさせる作戦に持ち込んでいた。カルガースの剣は何度もぎりぎりのところでゴディウィンの体をかすめ、致命傷を与えるどころではない。
次第にカルガースが苛立っているのが傍目にも分かるようになってきた。これはあくまでも神聖な戦いであるので、回りを取り囲む人たちは、内心ではカルガースの勝利を願ってはいても、声ひとつたてることはない。アリアーネもゴディウィンを味方でありながら、カルガースの身を案じていた。
カルガースが一方的に攻め、ゴディウィンが防御する展開が延々と続く。天空の天辺にあった太陽も、次第に西へと移動していく。どちらも肩で息をしているが、未だに決定的といえる瞬間はなかった。休憩すら与えられない、過酷な戦いであった。
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