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カルガースの剣は大振りになってきた。それに対し、ゴディウィンはまだ自らの剣を相手に振り下ろしてさえいない。ひたすらの防御、防御、防御。いつもぼんやりとしているゴディウィンの目がギラギラと光っている。
アリアーネはゴディウィンがとっくに記憶を取り戻してるのでは、と思わないでいられなかった。いや、まさかと思うが、今までずっと記憶を喪ったふりをしていたのでは? そう考えてしまいたくなるほど、今のゴディウィンはカビル相手に戦っていたあの夜の彼とそっくりであった。
カルガースの足がついに止まった。日はもう大きく西に傾いていた。夕日を背にしたゴディウィンは、剣を左脇に差し込み右手で黄金の環を空に掲げた。それは陽の光を反射して、一瞬カルガースの視野を暗くした。その瞬間を逃さず、ゴディウィンは再び剣を握り、カルガースの左脇腹を突いた。
よろめいたカルガースの、さらに左肩を突く。彼は後ろにどうと倒れ、仰向けに横たわった。
「神々はお前を勝たせたかったようだな、マラッドよ。さぁ、私の命をとるがいい」
ずっと無言だった周囲から、悲鳴のような声が洩れ聞こえた。この結果は神々の審判によるものなのだから、誰もゴディウィンを止めることは出来ないし、非難することも出来ない。
「何をしている。何故、私を殺さない?」
「俺はナレン人だからな。キーリングルの神々の掟など知るものか」
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