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終わり
その場にいた者が全員、呆気にとられてゴディウィンの方を見た。マラッドが喋った? これまで"ハーミア"か、それ以外にはほんの一言二言しか話せなかったマラッドが? こんなにもすらすらとよどみなく喋っている?
「あんたは勇敢に戦おうとしていたのに、俺は卑怯にも逃げて回った。こんな体だから、それしか勝つ方法がなかった。それでも、俺の勝ちと認めてくれるなら、あんたとの勝負はここで終わりにしたい。俺は命の恩人を、こんなにも皆に慕われている人を無為に殺したくはない」
カルガースは既に部下たちの助けによって、何とか立ち上がっていた。その脇腹からも左肩からも血が流れ、大地に滴り落ちている。カルガースの青い目とゴディウィンの黒い隻眼が、瞬きもせず交わった。
「よかろう、その申し出を受け入れよう」
カルガースはそう言って、ゴディウィンに向けて片手を差し出した。
「神々が下された裁定だ、潔くお前の勝ちを認めることにしよう。アリアーネ、こちらにおいで」
アリアーネが恐る恐る近づくと、カルガースは懐から金髪の一房を取り出し、
「これを君に返す。我々の結婚の約束はこれにより無効だ。君が今までもこれからもマラッドの妻であると認めよう」
「ありがとう、カルガース」
と、アリアーネはそれを受け取ったが、
「早く止血しないと。すぐに医者に看てもらって」
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